スポーツ界の摩訶不思議「復帰テスト」 【ひろメディカルケア】

復帰テスト
ひろ

こんにちは!ひろ(@hiro__mc)です!

私は過去に約20年ほどサッカーの指導者という立場で社会人やジュニアの選手たちと触れ合っていました。

その時期には選手の様々な身体の問題に直面することも多々ありました。

そんな私が畑中メディカルテーピングと出会い、身体と痛みの構造というものを学びそれまでの考え方や常識が変わっていき今に至ります。

そんな私が最近に強く疑問に感じていることがあります。

それを書いてみたいと思います。

「故障者リスト」というシステム

某高校サッカー部には「故障者リスト」という枠があります。

何かしらの障害や外傷などによって運動が出来ない状態になるとこの「故障者リスト」という枠に入ります。

この枠に入ると練習や試合は見学や雑用になってトレーニング参加は出来なくなります。

そして治療や養生の期間を経てトレーニングに戻れるようになったから張り切って復帰!・・・とはならないのです。

復帰するためには「復帰テスト」と称するテストを受けてそれに合格しなければならない。

この「復帰テスト」というは1500mの持久走を走って、決められた基準タイム以上かつ前回の自己タイム以上(故障が2回目以降の場合)というものです。

これがキツイので選手たちはこのテストを受けたくありません。

単に走るのがキツイというだけならサッカー選手としては問題にならないのです、
忘れてならないのは対象が故障や怪我でしばらくトレーニングに参加出来ていなかった選手ということです。

数週間のブランク上がりでいきなりの1500mは想像以上にハードですし、そもそもそこに何の意味が?と選手達も考えるわけです。

なので出来るだけ「故障者リスト」に入ることを避けるようになるということです。

色々と聞くとこのシステムを採用しているチームはそこそこあるようです。

故障者リストに入りたくないので故障を隠す

「故障者リスト」に入らないためにはどうするか?

もちろん身体に痛みが生じるようなことがなければ良いのですが、競技スポーツの世界では残念ながら往々にしてそれは発生します。

それでも故障者リストに入りたくないなら?
それは簡単で指導者に故障していることを悟られなければ良いのです。

つまり、痛いけど痛いとは言わず我慢してプレーを続ける・・・ということですね。

もしかしたらこの制度を肯定する指導者は選手の意識がこうなることを望んでいるのかも?

あるいは「あれ?あいつ、なんか様子がおかしいな?」と気づいていても選手が言ってこないことを幸いとして見てみぬ振りをしてるかもしれません。

そもそも、選手が身体の不調を隠してることに気づかないというのは指導者としていかがなものなのか?という疑問もありますがそこは今は置いておきます。

日本には(世界ではどうか??)「スポーツをやっていれば身体に痛い箇所の1つや2つはあるもの」という考え方をするスポーツ人は多いです。

確かに生活が掛かってるプロ選手に対してならばこの考え方を全否定は出来ないかもしれません。

しかし、それがいわゆる育成年代と呼ばれる高校生や中学生、ましてや小学生が対象の場合でもこの考え方は正しいでしょうか??

痛みを我慢してのトレーニングは意味があるか?

痛みを隠して我慢しながら練習に参加する・・・という傾向は年齢が上がればそれだけ増えていくように感じます。

つまり、小学生の低学年より高学年、小学生より中学生、中学生より高校生・・・ということです。

これはやはり年齢が上がるにつれて競技志向(アスリート志向)の面が強くなってくるからだと思います。

競技志向になることで考え方がプロ選手のような価値観を中心とするようになっていく。

その結果として「多少のことで練習を休むのは選手としては失格である」という考え方になる。
このような考え方を持っている指導者にはこう質問してみたいです。
「痛みを我慢してのトレーニングは選手の能力向上に役立ちますか?」

痛い時に頭に思い描くこととは?

例えばコーンドリブルをやるとします。

その時に踵が痛いのに我慢してやってもこの練習のテーマは達成できるのか?

例えばシュート練習をするとします。

その時に軸足の膝が痛いのに我慢してやってもこの練習のテーマは達成できるのか?

指導者のみなさん、いかがでしょうか?

一口に「コーンドリブル」といっても指導者は様々なテーマを盛り込むと思います。

「早く」「正確に」「両足で」「顔を上げながら」などなど。

シュート練習の場合にも「強いシュート」「正確なシュート」「浮かさない」「GKを見ながら」などなど。

いずれにしても大事なのは「指導者が設定したテーマにそってトレーニングが行われて選手が成長すること」です。

しかし、身体の痛みを隠しながら参加する選手にとってその時間に一番考えている事はなんでしょう?
「どうしたらこの動きの中で痛みを少なくできるか?」です。

上手くならないどころか技術的には下手になる可能性

踵が痛い選手は踵が痛くないような動き方をしてしまいますし、膝が痛い選手も同様です。

これの一番わかり易い例が「足が痛い人の跛行(いわゆる『びっこ歩き』)」かと思います。

例えば、右の膝が歩くと痛いという時には右足が地面に着いて体重が乗ると痛いのでその時間を減らすために左足をすぐに出して右足を浮かせようとする。

結果的に左右の足が地面に着く時間に差が出来てしまう。

これが「跛行」であって、それは意識しても痛みが強ければ直せません。
精神論や根性論を言う指導者さんは自分の片足のシューズに画鋲を入れて普通に歩いてみてください。

画鋲とまではいかなくても小石でもいいです。

1,2分の間なら大丈夫かもしれません。

ですがこれが60分とか120分となると必ず刺激や痛みを避けるように歩いてしまいます。

その状態で「トレーニングに参加」すると想像してみてください。

例えばこのように痛い箇所をかばう動き方や身体の使い方をする中で技術を習得することは出来るものでしょうか?

むしろ痛みをかばうことで様々な細かい動きがブレてしまい、おかしな癖がついて、それを反復することで身についてしまうとしたら?

結果的に選手には悪いクセがついてしまい技術的に下手になるという可能性は考えられないでしょうか。

「復帰テスト」の意味とは???

某高校サッカー部での「故障者リスト」からの復帰条件として「復帰テスト」というものがあると書きました。

実は高校生だけでなく、当院にケアにきた中学生達からもいくつかのクラブで同じものがあると聞きました。

この時に聞いた内容は「反復横跳び」「50mダッシュ」などを規定タイムかつ前回の自己タイム(2回目以降の場合)以上で・・・というものでした。

この「復帰テスト」という制度は私には全く意味が分からないのです。

元指導者としては、理想論だけでなく現場で頑張る指導者の気持ちや感情の部分についても理解出来る部分も多い。

ですが、この制度だけは本当に分からない。

いったい何を目的としての制度なのか???

そもそも「故障しているから身体を休めて治癒させる」のが故障者にとって必要な事です。

当然にその間には体力や筋力は落ちます。

なのに、いきなり持久走や反復横跳びで自己タイムを上回れとは本気ですか?と聞きたいです。

復帰となっても少しずつ様子をみながら、必要なら別メニューなどで調整しながら復帰させる配慮も時には必要です。

なのに、いきなりそんなフィジカルトレーニングもどき(「トレーニング」とは呼べないので)をさせて、また怪我させて休ませたいんですか?と。

故障は罰をうけるようなことなのか?

「故障者リスト」や「復帰テスト」というシステムは無いけれど、部活やクラブの活動を休めないというのは本当に多く聞く話です(特に中・高校生世代)。

当院に来たいのだけれど部活から帰宅するのが夜の9時過ぎで・・・といったご相談もお聞きします。

「無理して参加したってどうせプレー出来ないなら休んで来れば良いのに」と私は感じるのですが「とにかく休めない」・・・。

「練習を休むのはとにかく悪」という考え方がまだまだ強くあるのでしょう。

また、それが治療のために許可を取れば休めるとしても、休むと次の試合に出られないというのも多く聞きます。

休むことに対して「試合に出られない」というペナルティを受けるわけです。

つまり「治療のために休む」ということは「ペナルティを受けるに値する」とその指導者は考えているということでしょうか。

治療は怪我や故障した身体には必要なのでつまりは「故障するのはペナルティを受けるべきこと」となります。

こういう考え方の組織や指導者の元では選手がどのような行動をするか?

選手は怪我や故障を指導者に対して隠すようになります。

結局は信頼関係

私が以前に担当していた学年の子どもたちは身体に痛いところがあるとすぐに「コーチ、○○が痛い」と言ってきました。

これはもちろん私が普段から「どこか不調があればすぐ言え」と伝えてあったことと、私がほとんどのことはその場でなんとかして出来るということが大きいと思います。

つまり「コーチに言えばなんとかしてくれる」という信頼感なのだと思います。

ケアの技術や知識がなくてその場でなんとかしてやれなくても「選手として身体が痛くて思うように出来ない悔しさ」を分かってあげるだけでも良いのです。

そこを親身になってあげるだけでも信頼関係は出来ていくのではないかと思います。

「コーチ、○○が痛いです」と言った時に「お前はすぐ痛い痛いと言い過ぎ」と言う人を信頼出来るのか?

それを言われた選手はそれを言う指導者になっていくでしょう。

悪い循環はどこかで断ち切ったほうがスポーツ界のためには良いのでは?

身体の不調を隠しながらパフォーマンス50%で休まず練習よりも、スパ!っと休むときは休んでシッカリ治してから100%でのトレーニングをするほうが良いのではないかと思うのですがいかがでしょう?

身体のケアをするのなら

身体に痛みが出るような状態ならスポーツを休む必要があることは多いとは言いつつも、やはりその競技が好きな選手は休みたくないですよね。

それでも残念ながら当院でも症状や状態によってはしばらく練習や試合は休んでくださいと言わざるを得ないこともあります。

ですが、ダラダラと効果の見えないケアを継続させるようなことはありません。

若年層の場合ですと1,2回のご来院で終わることがほとんどです(オスグッドや有痛性外脛骨障害など時間がかかる症状もあります)。

もしも身体の痛みにお悩みでしたらぜひとも一度ご相談ください。

それでは良い一日を!

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